~取るのが難しい距離感~

「家族なのに、距離を感じて寂しい。」

先日、そんな言葉を聞きました。

結婚して、独立した息子さんがいるのですが、休日のお出掛けに始まり、スケジュール全般、何から何までお嫁さんに任せきりなので、息子さんに何かを頼んでも、

「空いてるか、嫁さんに聞いてみて~」と言われる。

そう言われても、お嫁さんには聞きづらいし、頼みづらい。

つい、それじゃ、いいわ!となる。

なんだ、いいのか?で済ます気のきかなさと、お嫁さんに頼りきりの息子が頼りなく感じると同時に、寂しさも感じる、と。

「家族なんだから、もっとしてくれてもいいじゃない」


「家族なのに、どうして分かってくれないの?」

その気持ち、分からなくはありません。

自分が大切に育ててきた息子さんだからこそ、困ったときには助けてほしい。

もうちょっと、気にかけてほしい。

自分のことを大切にしてほしい。

そう思うのは、決しておかしなことではありません。

でも、ちょっと立ち止まって考えてみるに、そもそも「家族」って、何なのでしょう?

血がつながっていること?


同じ家で暮らすこと?


結婚によって親族になること?


それとも、何かあったときには必ず助け合うこと?

家族に対する想いは、人によって違います。

そして、家族だからといって、相手の人生が自分のものになるわけではありません。

ましてや、結婚し、独立した息子には息子の家庭があり、その妻にはその妻の人生があります。

結婚した二人が、自分たちの家庭をつくり、そこを大切にしていく。

それは、親を大切にしていないということとは違います。

むしろ、親の家族から少しずつ自分の家庭へと重心を移していくことは、ごく自然なことと思います。

ところが「家族だから」という言葉には、ときどき不穏なな力を発揮し、束縛を生みます。

「家族なんだから助けて当然」
「家族なんだから分かって当然」
「家族なんだから私を優先して当然」

いつの間にか、

「家族だから、私の期待に応えてね」

という縛りに変わってしまうのです。

そうなると、家族であることが、安心ではなく負担になってしまいます。

本来、家族だからこそ、幸せを願い、無理をさせたくない、と思える存在なのに。

家族だからこそ、嫌と言ってもいい。


家族だからこそ、今はできないと言ってもいい。


家族だからこそ、それぞれの時間を尊重していい。

私は、そんな家族のほうが長く続くのではないかと思っています。

「家族なのに、何もしてくれない」

そう感じたとき、本当は「何をしてくれないのか」だけではなく、

「私は相手に、何をしてほしいと思っているのだろう?」

と、自分の気持ちを見てみることも大切です。

寂しいのかもしれません。


大切にされたいのかもしれません。


必要とされたいのかもしれません。

もしかしたら、「家族なら愛してくれるはず」という期待が、そこにあるのかもしれません。

でも、愛情と期待は全く別のもの。

相手が自分の望むように動いてくれなくても、愛情がないということにはなりません。

「家族だから、こうしてほしい」と求めるより、

「あなたのことを大切に思っている。あなたの人生も大切にしてね」

と言える関係のほうが、ずっと自由で、心地いい。

家族だから縛るのではなく、
家族だからこそ、自由にする。

そんな距離感を持てたとき、家族は「義務」ではなく、心から大切にしたい存在になっていくはず。

家族だから、してもらう。

ではなく、

家族だけれど、してもらわなくても大丈夫。

そして、できるときには自然に手を差し伸べる。

そんな関係が、私は一番心地いいと思うのです。